この木どんな木【???】

1年前のある日、長い間野原工芸のペンを使って下さっているお客様からとある木を預かりました。「1年後に答え合わせに来るから」と。

手のひらサイズのその木は黒っぽく導管がハッキリとしていて、硬さがありました。

匂いもあるのですが、どんな匂いかと言われると上手く表せません…

いつも木材を調べている図鑑を読んでも当てはまるは無く、[黒い木]や[硬い木]などのキーワードを入れてインターネットを使って調べてもピンとくるものは出てきませんでした。

どうしたものか…と悩んでいたのですが、もしかしたら画像検索で出るかも?と期待して写真を使い調べてみると…ヒット!

【沈香(じんこう)】が出てきました!

いや、沈香ってあの蘭奢待(らんじゃたい)と同じ木!? 私が預かってて、こんな扱いして大丈夫なのか!?

正体がわかった瞬間アワアワしてしまいました(笑)

沈香とは

沈香とは主に東南アジアの熱帯雨林に自生しているジンチョウゲ科の樹高の高い常緑樹が元になっています。

木の樹皮に傷がついたり、菌に感染した場合にその部分を治すために樹液を出します。この樹液が固まって樹脂となり、長い時間をかけ胞子やバクテリアの働きによって樹脂の成分が変質し、特有の香りを放つようになったものが【沈香】になります。

なのでジンチョウゲ科の木が香るのではなく、変化した樹脂が香るということになります。

沈香にはランクがあり、最高級品の伽羅(きゃら)の香りは「甘・酸・辛・苦・鹹(しおからい)」の五味に通じる言われています。

そのためこういう香りと言葉にするのが難しい、複雑な香りをしているそうです。

沈香の元となるジンチョウゲ科の木は成長するのに約20年かかり、更に沈香ができるまでに50年、そして更に高品質な沈香になるには100〜150年かかると言われているそうです。

沈香は自然にできたものと人工的に作ったものとあるそうなのですが、人工的に作ろうとしても必ずできる訳ではありません。

現在では乱獲を防ぐためにワシントン条約の付随書Ⅱに指定されています。

そして、先程出てきた「蘭奢待(らんじゃたい)」とは天下第一の名香と謳われている沈香になります。正倉院に収蔵されており、普段は見ることができません。

天下無双の香りとも言われており、足利義政、織田信長、明治天皇が切り取り焚いて香りを楽しんだそうです。

その証として、誰がいつどこを切ったか付箋が付けられています。

それほどに希少で高価な沈香。正体が分かって、調べれば調べるほど私が預かってて大丈夫だろうか…となっていました。

ですが、今後沈香を間近で見て匂いを嗅ぐ事ができるか分からなかったので、しっかりと観察させて頂きました。

現在は持ち主の方にお返しさせて頂きました。

もし皆さんも気になりましたら正倉院展にて蘭奢待を見ることができ、再現された香りを体験する事ができるので機会がありましたら是非行ってみて下さい!

 

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